【特別対談】自然を味方にする家づくりと、これからの「大工の復権」

【対談メンバー】
田口 卓也 氏(田口建設 代表取締役 / 通気断熱WB工法 東信支部長)
児玉 氏(株式会社ウッドビルド 取締役)
En 編集部 遠藤(ディレクター / ファシリテーター)
[第1部]自然を敵に回すな。信州の風土と生きる「WB工法」の魅力

En 編集部:田口さん、この度はWB工法・東信支部の支部長就任、おめでとうございます!
周りの会員さんからも「1級建築士であり、現場を熟知した田口さんにぜひ引っ張ってほしい」という強い推薦があったと伺っています。
改めて、長年現場でWB工法に触れてきた田口さんが感じる「WB(通気断熱WB工法)」の一番の魅力はどこにありますか?

田口:ありがとうございます。
一言で言うなら、やっぱり「自然には敵わない。
だからこそ、自然を味方にしちゃった方がいい」ということですね。
今の一般的な住宅って、高気密・高断熱を追求するあまり、ビニールで家を丸ごと包んで、機械で無理やり換気して、ある意味「自然をシャットアウト(隔離)」して戦っている状態だと思うんです。
でも、どれだけ遮っても自然の力には勝てない。
だったら最初から自然を味方にして、家の中を自由に、健やかに空気を通わせた方がいい。
それができるのがWB工法なんです。

En 編集部:「自然を敵に回すのではなく、味方にする」。
めちゃくちゃ腑に落ちます。
特にこの信州長野は、豊かな森林があって気候のパワーも強い。
そんな場所に住みながら、機械のシステムだけに頼った家づくりって、どこか不自然じゃないかって常々思っていたんですよね。

児玉:田口さんから「自然を味方にする」という言葉が出たのは凄く嬉しいですね。
まさに私たちの創業者は元々、神社やお寺を手がける社寺大工でした。
本来の日本建築は、日本の四季や気候に寄り添う「通気と透湿」の技術そのものなんです。
ただ、昔の日本の家は唯一「冬が寒い」という弱点があった。
それを補うために現代の家はビニールで密閉する道を選んでしまったのですが、WB工法はその寒さの課題だけを別の技術で解決している。
だから、今の住宅が忘れてしまった「日本建築の奥深い知恵と文化」を、そのまま現代の住まいに残すことができるんです。
[第2部]図面と現場のズレを無くす。設計する大工「オンリーワン」の強み

En 編集部:日本の建築文化の主役は、やっぱり大工さんですよね。
田口建設さんの強みは、田口さんご自身が1級建築士として図面を引き、自ら大工として現場で手を動かす「一貫性」にあると思います。
お客さんの家を作る上で、特に意識していることはありますか?

田口:私は、常に「自分がここに住むとしたら」をリアルに想定しながら作っています。
正直、お引き渡しの時には「自分の家を手放したくない!」って思うくらい、一緒に住んでいる感覚で作るんです(笑)。
図面の上(線)だけで考えて作業するんじゃなくて、現場で実際に自分の身体を動かしながら「あ、ここの幅はこれくらいがいいな」「ここにコンセントがもう1個あったら絶対に便利だな」って気付くことが沢山ある。
だから、電気屋さんの到着を待たずに自分で配線を通しちゃうこともあります(笑)。
全部自分で解決して、一貫して進められるからこそ、お客さんに100%満足してもらえる住まいができるんです。

児玉:設計と大工(現場)を両方やるからこそ、「図面上の計算」と「現場での体感」に一切の誤差がないんですね。
今の時代、設計と現場が完全に分業化されていて、設計士はデザイン重視で住みやすさまで気が回らなかったり、遠隔の設計士だと地域の気候が分からなかったりするズレがよく起きます。
田口さんのように1人で完結できるのは、他社には真似できない本当のオンリーワンの魅力ですよ。

田口:現場でお客さまとお会いした時、できたものを見てパッと表情が変わる瞬間があるんです。
その表情を見れば、自分の提案が正しかったかどうかが分かる。
私は常に、お客さまの想像の「一歩上」を行きたいと思って、難しさも楽しみながら作っています。
[第3部]見えない大工を、憧れの職業へ。子どもたちへの技術の種まき

En 編集部:今、建築業界全体で職人不足・大工不足が深刻だと言われていますよね。
そんな中で、田口さんは地元の学校で講師をされたり、子ども向けの出張体験イベントをされたりと、技術の継承にすごく熱心に取り組まれています。
その根底にはどんな思いがあるんですか?

田口:今の高校の建築科って、実は「技能(実際に木を切ったり削ったりする時間)」がほとんどなくて、設計や管理の座学がメインになっちゃっているんです。
せっかく建築の道を志したのに勿体ないなと思って、学校に「技能のカリキュラムを入れてくれ」と直談判に行きました。
最初は門前払いだったんですが、娘がその高校に入って、私がPTA会長になったのをキッカケに(笑)、なんとか風穴を開けて今も講義を続けています。
小学生向けの体験イベントをやっているのも、子どもたちに「モノ作りってこんなに面白いんだ!」という記憶を、小さいうちに植え付けたいからなんです。
将来全員が大工にならなくてもいい。
ただ、人生の選択肢のどこかに「建築って楽しかったな」という種まきをしておきたいんですよね。

児玉:今、大工を目指す子が減った最大の原因って、「大工の格好いい姿が見えなくなったこと」だと思うんです。今の現場って、安全や効率のために足場とシートで家全体が完全に囲われていて、外から大工さんが汗をかいて木を叩いている姿が一切見えない。
昔は近所で棟上げ(上棟式)があれば、大工さんの格好いい姿が子どもたちの目に自然と入って憧れになった。
目にする機会がなければ、選択肢に入らないのは当然です。だからこそ、田口さんがやっている「大工のリアルな技術を見せる・体験させる」という活動は、本当に価値があると思います。

En 編集部:今の便利な時代だからこそ、機械化・自動化で人の仕事が減っていく中で、日本古来の文化や気候に根ざした「伝統の知恵」と「職人のリアルな技術」を五感で体験し、次の世代へ受け継いでいく。
田口さんの持つ熱い技術と思いが、WB工法という素晴らしいシステムを通じて、これから東信エリア、そして未来の子どもたちへもっと広く、長く引き継がれていくことを確信した会合になりました。
本日は本当に熱いお話をありがとうございました!
